寝違いとは
1.概要
寝違いは筋膜の微細断裂に起因する炎症性疼痛疾患であります。
首の筋肉が固く筋緊張が高い人の場合、常に筋膜に過度な牽引ストレスがかかっており、睡眠時の首の不良姿勢などで容易に筋膜断裂が生じます。それが引き金となって筋膜に炎症が生じ起床時に首を負傷してしまいます。強い炎症が生じた場合と頭痛や背中の痛みも同時に出現することがあります。
近年の研究データによると、睡眠時、レム睡眠からノンレム睡眠に移行するタイミングで過度に筋緊張が高まる為、その時に筋膜断裂(寝違い)が生じやすくなる事が分かっています。
2.検査法
⑴動作時痛検査
頚部を動かした際に生じる痛みの部位とその動作から、筋膜断裂の生じやすい肩甲挙筋、頭最長筋、頭半棘筋の中でどの筋膜が損傷しているかを同定します(図1)。
具体的には、右側を向いて右首に痛みが出れば肩甲挙筋及び頭最長筋、左首に痛みが出れば、頭半棘筋の筋膜断裂が疑われます。
⑵圧痛検査
押した際に生じる痛みの強さや部位から損傷程度を評価する。
※全ての検査は優しく、丁寧に行いますので、ご安心ください。
図1
出典:アプリ名:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021
会社名:Argosy Publishing
3.治療方法
筋緊張の高まっている部位に対して手技療法、電気療法、高電圧療法等を実施して、強い筋弛緩を誘導します。筋弛緩により損傷筋膜に加わっている物理的ストレスが減弱する事で、痛みが軽減します。その結果、患部の血流が改善し、断裂した筋膜の修復が促進されます。(図2)。 図2
4.治療期間
通常、治療直後より頚部痛は大幅に軽減し、1~2週で消失します。
5.症例紹介
26歳、女性、寝違い(右肩甲挙筋の筋膜断裂)
⑴負傷原因
不自然な姿勢で寝ており、目が覚めた時に首に痛みを感じた。
⑵経緯
1日様子を見て安静に過ごしたが痛みが引かず、首を右側へ向ける事ができない事に不安を覚え当院受診。
問診・検査・触診の結果、右肩甲挙筋の筋膜断裂と判断し治療開始。
⑶治療内容
各徒手検査にて痛めている筋膜を同定し、電気療法、手技療法に加えて高電圧療法を実施。
⑷経過
治療直後より右側を向けるようになり、4日目には痛みが消失した為、治療終了。
⑸総評
頚部の鋭い痛みで右側を向く事ができないという重度な症状があったが、患部に手技療法や電気療法に加えて高電圧療法を実施した結果、早期に痛みを取り除くことが可能であった。